審J2003397

どんな治療?

発症年齡、眼筋型、全身型、重症度、自己抗体検査結果、胸腺画像異常の有無などにより治療法が選択されます。

MG/LEMS診療ガイドライン2022 <成人期発症MG 病型ごとの治療アルゴリズム>

MG/LEMS診療ガイドライン2022<成人期発症MG 病型ごとの治療アルゴリズム>

<各病型>​

①OMG:眼筋型MG ②g-EOMG:全身型早期発症MG ③g-LOMG:全身型後期発症MG ④g-TAMG:胸腺腫関連MG ⑤g-MuSKMG:全身型Musk抗体陽性MG ⑥g-SNMG:全身型抗体陰性MG​

抗コ薬:抗コリンエステラーゼ薬、PSL:プレドニゾロン、IVMP:メチルプレドニゾロン静脈内投与、EFT:早期速効性治療、IVlg:免疫グロブリン静注療法、PLEX:血漿交換、IAPP:免疫吸着療法、FT:速効性治療
※ナファゾリン点眼液は表在性充血などに汎用される薬ですが、本邦ではMGに保険適用はありません。

治療

抗コリンエステラーゼ薬(内服薬)

神経の末端から放出されるアセチルコリンを分解するコリンエステラーゼ(酵素)の働きを抑えることで、神経筋接合部のアセチルコリンが増加します。アセチルコリンが増えれば神経から筋肉への刺激の伝達が改善され、眼や全身の症状が良くなる治療薬です。経口薬で効果が早くみられますが、その作用は一時的です。抗マスク抗体が陽性の場合は、過敏症状が出やすいため 投薬はひかえるか、少量で慎重に行います。

胸腺(腫)摘除術

画像診断検査で、胸腺腫があれば周辺の胸腺組織を含めた胸腺腫摘除術を施行します。また胸腺腫がなくても、胸腺の過形成があり、若年~成人でアセチルコリン受容体抗体陽性の全身型の患者さんには、オプションとして胸腺摘除術が考慮されることもあります。​
胸骨を切り開かない低侵襲な内視鏡手術やロボット手術も行われています。

ステロイド

[ステロイド内服薬]

ステロイドは、副腎から分泌されている副腎皮質ホルモンを人工的に合成した薬です。自己抗体の産生を抑えることで、神経から筋肉への指令伝達が改善され、筋力が回復することを期待します。

[ステロイドパルス療法]

ステロイド薬を短期間に多量投与する治療法で、点滴で行われます。筋無力症状の改善とステロイド内服薬を減らせることも期待されます。

ステロイド薬以外の免疫抑制薬

ステロイド薬と同様に、免疫異常を改善することにより筋無力症状を回復することができます。この薬はステロイド薬と一緒に、あるいはステロイド薬が使えない場合に使用します。

免疫グロブリン療法

ステロイド薬又はステロイド薬以外の免疫抑制薬が十分に奏効しない場合に、献血ヴェノグロブリン®IHを通常、成人には1日に人免疫グロブリンGとして400mg(5%製剤:8mL、10%製剤:4mL)/kg体重を5日間点滴静注します。

血漿浄化療法

血漿分離器で、自己抗体を血液中から取り除く治療法です。通常は2週間くらいかけて5-7回程度行います。免疫吸着法、二重膜ろ過法、単純血漿交換法があります。抗マスク抗体が陽性の場合は、二重膜ろ過法か単純血漿交換法が選ばれます。

胎児性Fc受容体(FcRn)阻害薬

自己抗体を含むIgG抗体はFcRnによってリサイクル(再利用)されています。FcRn阻害薬は、それを防ぐことで抗アセチルコリン受容体抗体や抗マスク抗体血中濃度を下げる薬です。ステロイド薬又はステロイド薬以外の免疫抑制薬が十分に奏功しない全身型重症筋無力症に使われます。血漿浄化療法に類似した一時的な血中抗体価の減少が見られますが、通常の点滴あるいは皮下注射で行います。

補体阻害薬

抗アセチルコリン受容体抗体が陽性の全身型重症筋無力症で、ステロイド薬又はステロイド薬以外の免疫抑制薬が十分に奏効しない場合は皮下注射で、免疫グロブリン療法や血漿浄化療法では症状の管理が困難な場合は点滴で補体の働きを抑えて眼や全身の症状改善を図ります。抗マスク抗体陽性の全身型重症筋無力症の場合は、補体が関与しないため使いません。治療開始後に、発熱、頭痛などの髄膜炎菌感染症が疑われる症状が見られた場合、直ちに主治医と連絡をとり適切な処置を受けましょう。