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第3回  Look at yourself!…こんな指導医いらない!

福井大学医学部附属病院 総合診療部 教授
林 寛之 先生
(審J2005050)

「最近の研修医って、まるで宇宙人のようだよ」と嘆くあなた。自分たちだって若い頃は「新人類」と言われていたのではないか?逆に、研修医から見れば「とんでもない指導医」もたくさんいるはずだ。人をとやかく言う前に自分をなんとかしなくちゃ。後輩に後ろ指をさされるような指導医にならないためには、いかにして自分の広い背中を見せられるかがカギになるよね。

「技は自ら盗め」だなんて、教えることを放棄した指導医は必要ナシ

積極的に教える 子が親を選べないように、研修医も指導医を選ぶことはできない。研修医にとって目標となるような“教師”になるか、はたまた「あぁはなりたくない」と思われる“反面教師”な指導医になるか。せっかくなら、後輩から尊敬される存在になってほしいわけなのだが、ならば話は簡単。「こんな指導医なんて、いらない」と思われる例を参考に、気をつければいいだけのことなのだ。さぁ、まずは「いるいる、こんなNG指導医」をズラリ紹介しよう。

まずは、「技は自分で盗めと言い放ち、まるで教える意思のない指導医」。ふる~い徒弟制度にとらわれているかのような態度の指導医は実は今も健在。研修医制度という教育体制を敷いているのなら、受け入れる側にも教える責任はあるはずなのに、それを放棄するとは!中国の古い言葉に「青は藍より出でて、藍よりも青し」という一節がある。これは弟子が先生よりも優れた名声や評判をあげることを讃えた言葉であるが、指導医も然り。自分よりも優秀な医者を育てることに喜びを見出せるよう気持ちにゆとりをもってもらいたいものだ。

ほかにも、

  • ・「質問すると怒り、議論・反論の余地を与えない指導医」
  • ・「あいさつしても返事もなしという、社会的にも問題ありな指導医」
  • ・「トラブル症例を研修医に押しつける指導医」
  • ・「研修医のミスに責任を持たず、むしろ突き放しにかかる指導医」
  • ・「研修医の面倒をみないで、陰口を言う指導医」
  • ・「患者さんを診察せずに指示を出すような指導医」
  • ・「コンサルトしても来てくれない指導医」
  • ・「特定の看護師が夜勤の時に病棟に現れる指導医」
  • もやっぱりいらない!

研修医に教えることは、自分の臨床判断を再確認できる絶好のチャンスであり、自分にとっても高い学習効果を生むものなのだ。自分のモチベーションのためにもぜひ、積極的に「教える」ことを実践してほしい。

人格を否定するような指導はダメ!指導医のNG言動&マナー

人によって指導の仕方やクセというのは当然あるはず。でも、そのなかにも守るべきルールは存在する。特に注意してほしいのが「人格を否定するような指導はNG!」ということだ。教える側と教わる側という上下関係があったとしても、ことあるごとに「アホ、バカ」と罵ったり、気分しだいで当り散らすなど人をゴミ扱いするような態度をとっていては、教育どころか良好な人間関係すら築けるはずもない。他にも、つい言ってしまいがちなNGワードが「いつも」「必ず」「絶対」「常に」。「キミはいつもこうだ」「あなたは絶対に○○しないよね」と断定的に否定されてしまうと、研修医は「自分はまったく期待をかけられていない」と落ち込むうえ、過去のことまで引き合いに出されては正しようもなくなってしまう。Never say “Never”。100%だめだという断定的な表現は避けるようにしよう。研修医といえども、大学で勉強し、20年以上も人生を送ってきたれっきとした社会人である。大人同士のつきあいとして、愛のある指導をぜひ心がけて。

研修医がロールモデルにしたくなるような人物が理想的な指導医

さて、詰まるところ「優秀な指導医」ってどんな人物のことを言うのだろうか?正解は「なし」。な~んて。「いい指導医」に決まった形なんてないのだよ。なんせ、いい指導医としての評価は、育てた研修医のその後によって判断されるものだからね。「自分もああいう医者になりたい」と思われ、その研修医が指導医を超えるような優秀な医者になったときに初めて、「優秀な指導医」が誕生するワケ。ならば、研修医がロールモデルにしたくなるような指導医というのはいったいどんな人物かというと…。厳しくすべきときは厳しく。褒めるべきところは褒める。そして研修医に合わせて臨機応変に教えられる余裕。さらには、熱意があり、人間的な魅力があるかではないだろうか。

参考として、優秀な教育者として表彰された43人のカナダ人救急医たちに向けて行われた「指導医としてどんなことに気をつけているか?」というインタビュー調査の結果を紹介しよう。

「指導医としてどんなことに気をつけているか?」インタビュー調査結果

いい研修病院の選び方、作り方

病院をチェック どの病院でどんな指導医の元でどんな研修を受けたかで、医師としての将来性が決まるといっても過言ではない。ならば、どんな病院を研修先に選べばいいのだろうか。

・研修医がイキイキとしている病院。
研修医の自主性が尊重され、研修医が楽しそうに忙しく働いている病院がいい病院。先輩研修医などがいればそんなクチコミが最も役に立つ。お金にならない教育に労力をかけているかどうかは、見学先の研修医に聞くのが一番。ただ抄読会や症例検討をやってますというより、研修医がのびのびと「勉強になる!」と鼻息荒く言えるような質の高い教育をしているかどうかがチェックポイント。研修医が死んだ目になっている病院はやめておくほうがいいかも。各病院の様々な特徴は研修医からの情報によるところが多い。研修医だけのタコ部屋がいい心のよりどころになっている病院もあれば、研修医だけの自称合宿という旅行を許してくれる病院もある。そんなQOLを垣間見るのも研修医からの直接のクチコミだから、自分にあった病院選びがお勧めだ。

・土日に見学しよう。
土日に忙しいということは地域から信頼されている病院の証であり、研修先にふさわしい、いい病院といえるだろう。有名病院で研修医が山ほどいても、症例数が少ないのでは症例の取り合いになるだけで、経験値を上げるには物足りない。初期研修の基本はコモンな緊急を乗り越える実力をつけることに他ならない。稀な疾患を少しずつ診るのは後期研修で専門分野に進んでからにしたほうがいい。かといって、忙しすぎて研修医が放し飼いになり、コンサルトもまともにできないようでは、独学で学ぶしかない。忙しい中でもきちんと指導を受ける環境があるかどうかをチェックしよう。

そうは言っても100点満点の研修病院は無いんだよね。住めば都、自分が選んだ病院は一番いい病院と信じて、次には自分の理想の病院とするべく、いろいろアプローチする気概が必要だ。自ら必要な勉強会を開催すること。自分達だけでは無理なら同じ地域の教育病院の研修医に声を掛けてお互いに教えあう機会を設けよう。研修医獲得に苦労している指導医がいれば、助成をお願いしてみよう。絶好の機会だから金銭面や会場など助けてくれる上級医は必ずいる。うまく指導医を巻き込んで自分達にとって理想の研修の機会を作るように努力しよう。積極的な研修医を快く思う指導医のほうがはるかに多いのだから、ガンバレ!若人!

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