TOP 指導医向け、研修医向けコンテンツ 悩める指導医へのあるある辞典 第9回 Where are you?感染巣が不明のとき

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第9回  Where are you?感染巣が不明のとき

福井大学医学部附属病院 総合診療部 教授
林 寛之 先生
(審J2005076)

急性の発熱の場合は、やはり感染症が原因となっていることが圧倒的に多い。その原因がウイルスであれば特殊な場合を除けばほぼ心配はないのだが、それが頑固な細菌感染だとこれはやっかい。患者さんが、どこが痛いのかを明確に言ってくれたらその原因も分かるようなものだけど、なかなか症状を訴えてくれないとなるとこちらから感染巣を見つけ出さなければならない。無口な感染症はいったいどこに?患者さんの身体に潜んでいる感染巣の手かがりを探ってみよう。

無口な感染巣を見つける裏ワザ!

細菌感染が疑われているのに、その原因がどこにあるのか分からない。そんなときは以下の「ABCDE2&3PS」でばっちり!疑う箇所と探る手段の参考にぜひ。

Dr.林の感染巣検索のABCDE2&3PS

隠れやすい感染症の特徴とは?

患者さんの「いつも」に騙されない! 肺と尿路感染を探すのは基本の基本。X線に肺炎像が写らない肺炎だってある。CTを躊躇してはいけないことだってある。尿検査で安易に尿路検査を否定すると痛い目にあう。microabscessは間欠的にしか尿検査にひっかかってこない。CVA叩打痛があり、しつこい熱発があれば尿路感染を安易に否定しないでおきたい。

困ったときの血液培養。心内膜炎はやっぱりいつも騙される感染症の代表格だ。案外、四肢や目を見落としていることが多い。背中を見れば褥創があったり、そう、答えは目の前にあるってこういうこと。

肝膿瘍は肝機能検査を当てにしていたら見逃してしまう。肝機能が正常な肝膿瘍だってある。

前立腺炎はまず要注意。とくに高齢男性の場合は前立腺炎を疑うべし。高齢の男性にとって前立腺肥大は切っても切れない仲と言わざるを得ない。炎症の所見も強く、肺や尿路、神経系、腹部などをいろいろ検査しても感染巣がはっきりしないとなると、ますます前立腺が怪しい。なかなか自覚症状として訴えてはくれないこの前立腺炎。直腸診をして前立腺を触れば一発だ。前立腺に触れて飛び上がるほど痛がればほら、「み~つけた!」。最新テクを施した検査で時間をつぶすより直腸診ならあっという間だ。ただし、前立腺マッサージをしたら一気に菌血症になってしまうのでくれぐれもサービス?しないように。

患者さんの「いつも」に騙されてはいけない。「いつも副鼻腔炎があるから」「いつも腰が痛いから」などというのは見逃しにつながってしまう。副鼻腔炎も慢性化すると自覚症状として訴えてくれないもの。副鼻腔炎から髄膜炎へ波及することもある。案外、顔面を触っただけでしっかり副鼻腔炎の存在が疑えるものだ。腰痛も脊椎炎はMRIをしないとなかなかわからないものだ。

実は感染症じゃなかった!?気をつけなくてはならない悪性症候群

悪性症候群の特徴 感染症では熱の高さがひとつの判断基準となるが、この熱の計り方にも気をつけてほしい。ありがちなのが腋窩温のみでの計測。腋窩温で体温を計ったら37.4℃だったのに直腸温は39℃だったなんてことだってあるんだから。精神科薬内服中の熱発をみた場合は、感染症のみならず、筋肉が硬くなる筋固縮が認められる場合は必ず悪性症候群の可能性を視野に入れたい。

悪性症候群の特徴は(1)高体温(2)脳症(3)筋固縮の3つである。また、頻脈、異常血圧、頻呼吸、意識障害、発汗、白血球の上昇のうち4つの症状があてはまるのであれば、悪性症候群の可能性は一気に高まる。

また、悪性症候群の高体温は熱産生が亢進することによるので、感染症のように視床下部の体温調節のセットポイント変更とは無関係なので、解熱薬は効果が無い。クーリングが基本だ。悪性症候群では、CPKや白血球の数値が跳ね上がるので、安易に感染症のせいだと決め付けないようにしたい。悪性症候群の死亡率は12~20%と高率。治療にはまず原因となる薬剤の中止、そして(1) ダントリウム(2) ブロモクリプチン(3)ベンゾジアゼピン(痙攣に対して)の3つが有効。また、死亡率の要因ともなる横紋筋融解症の治療も積極的に行いたい。悪性症候群に感染症を合併したこともあるから、臨床はチャレンジングなんだ。

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