敗血症性DIC患者における
アンチトロンビン製剤投与後の
AT活性の回復と28日生存率の関係
監修
順天堂大学大学院医学研究科 救急・災害医学
射場 敏明 先生
射場 敏明 先生
Toshiaki Iba , Tomoki Tanigawa, Hideo Wada and Jerrold H. Levy.
Thrombo J. 2023; 21: 112
審J2401232
利益相反:本論文の著者1名は、一般社団法人日本血液製剤機構の職員である。
「禁忌」「安全性」等につきましては、電子化された添付文書およびDI頁をご参照ください。
監修者コメント
本研究は、AT活性が70%以下で、AT製剤が投与された敗血症性DIC患者を対象に、AT活性[投与前、投与後、投与前後の変化量(デルタ)]と28日生存の関係を検討したものである。敗血症性DICにおいてAT活性が低下する機序として、凝固活性化に伴うAT消費の亢進1)、肝臓におけるAT産生低下2)、血管内皮細胞障害に伴う血管外漏出3)などが指摘されている。本研究により、投与前AT活性、投与後AT活性、デルタAT活性のうちでは投与後AT活性の予測能が最も優れていることが示された。また、そのカットオフ値はAT活性80%であった。
投与後のAT活性は、投与前AT活性やデルタAT活性より予後予測に優れているという本研究の結果は、筆者の過去の報告と一致し4)、病態改善に必要な投与終了後AT活性値の目安になると考えられる。ただし今回の検討から、治療後AT活性と転帰の関係はDIC離脱の有無、年齢や基礎疾患、重症度に左右されることが明らかになり、この点に留意が必要である。以上をまとめると、AT活性が低下した敗血症DIC患者では、背景や重症度を意識し、目標AT活性値を達成するような治療戦略が必要と考えられる。