TOP 製剤情報一覧 疾患から探す ギラン・バレー症候群(GBS) ギラン・バレー症候群のエキスパートに聞く 予後改善をめざしたGBS治療のあり方

ギラン・バレー症候群

予後改善をめざしたGBS治療のあり方

埼玉医科大学総合医療センター神経内科 客員教授
野村 恭一 先生

2019年4月掲載
(審J2006213)

―埼玉医科大学総合医療センター神経内科の概要について教えてください。

野村先生:
埼玉医科大学総合医療センターの神経内科は、2004年に私を含め2人の神経内科医で立ち上げた教室です。開設以来、スタッフの育成に力を注ぎ、現在の教室員は20名を超えるまでになりました。現在ではそれぞれが専門性を持ち、神経内科が対象とする脳血管障害、末梢神経疾患、変性疾患、頭痛、認知症、てんかんをはじめとする多彩な神経疾患の診療を行っています。
2017年度の診療実績は、外来の初診・予約外が7,987名(約7割が紹介)、再診が12,033名、延べ20,020名で、入院は817名です。多くは急性期疾患であることから、1週間の入院が20~25名で、神経内科病床(50床)のうち半数が2週間で入れ替わる状況です。疾患としては、神経難病といわれる多発性硬化症(Multiple sclerosis:MS)、重症筋無力症(Myasthenia gravis:MG)、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy:CIDP)、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis:ALS)、脊髄小脳変性症などの免疫性神経疾患が半数以上を占めています。そこで免疫性神経疾患に対して、ステロイド療法、経静脈的免疫グロブリン療法(Intravenous immunoglobulin:IVIg)、血液浄化療法、免疫抑制剤などの免疫療法を駆使した最新の治療を行っています。

GBSの疾患概要と診断について

―GBSの疾患概要を教えてください。

野村先生:
GBSは、急速に出現する左右対称性の四肢の筋力低下と腱反射低下・消失を主徴とする自己免疫性末梢神経疾患です。先行感染後10~14日で発症し数日~2週間でピークに達します(疾患活動期)。その後数週~数ヵ月で自然寛解することが多いため一般に予後良好と考えられています1)(図1)。人口10万人あたりの年間発病率は1.0~1.9人と、ポリオが激減している先進国では、急性発症の四肢麻痺の原因として最も高頻度に日常臨床において遭遇する疾患です2)。男女比は3:2と男性に多く3)、ほぼ年間を通じて発症し、その多くが下痢や上気道炎などの先行感染を伴っています4)

図1 GBSの臨床症状と特徴

GBSの臨床症状と特徴
野村先生ご提供

―GBSの予後について教えてください。

野村先生:
重症度(表1)と臨床経過をみると、治療によって極期の重症度を歩行可能な段階(Grade 2)までに病勢を抑えることができればほとんど後遺症は残りません。しかし、Grade 3以上になると後遺症が認められるようになり、Grade 5になると5人に1人が車椅子生活を余儀なくされる5)など、15~20%の症例では日常生活に支障をきたす後遺症を認めます2)。また、急性期には、①球麻痺、②呼吸器合併症、③自律神経障害、④内分泌・代謝障害、⑤深部静脈血栓・肺梗塞、⑥疼痛、⑦精神症状、などの合併症(表2)を認める患者さんもおられます。そのため、治療経過中に経鼻胃管チューブや気管内挿管、人工呼吸器を適応するケースもあります。約5%の症例は死に至る2)と報告されており、その死因としては自律神経障害による不整脈からの心停止(突然死)が最も多く、次いで梗塞(脳、肺、消化器)といわれています6)
当科には、極めて重症のGBS症例が紹介・緊急搬送されてくることが多く、中には瞳孔が開き、対光反射がなく、手足もまったく動かず心臓だけが動いているような患者さんもいます。人工呼吸器装着例は約30%にのぼり、IVIg治療が保険適用になる前は急性期に2名の患者さんを亡くしています。その他に、急性期に一命をとりとめたものの、著明な筋萎縮や歩行不能が後遺症として残り、発症5年後に誤嚥性肺炎により死に至った症例も経験しています。したがって、少なくとも重症度がGrade 3を超える場合には集中治療室にて全身管理を行い、急性期の2~3週間をいかにうまく乗り切るかどうかがGBSの予後を決めるものと考えています。

表1:GBSの重症度の指標(Hughes functional grade scale)

GBSの重症度の指標(Hughes functional grade scale)

表2:GBSの合併症

GBSの合併症
野村先生ご提供

―ではGBSはどのように診断すればよいのでしょうか。

野村先生:
GBSは約7割で発症前に上気道炎などの先行感染を認め、その後、1~2週間、長い場合で3週間後から下肢のしびれ・脱力が現れ、徐々に上肢にも及ぶ上行性の四肢運動麻痺が生じ、感覚障害、自律神経障害も認められます。GBSの診断では、先行感染の有無や上行性の四肢運動麻痺、感覚障害の経過や程度など、特徴的な病歴の聴取が重要になります。その上で、四肢腱反射の消失または低下を確認します。これらよりGBSが疑われる場合では、入院にて血液検査、電気生理学的検査、脳脊髄液検査を実施します。髄液の蛋白細胞解離、および神経伝導検査で脱髄あるいは軸索障害が認められればGBSと診断します。ただし、電気生理学的異常や蛋白細胞解離は、発症2週間以上経過しなければ認められないこともあります。そのため、手足の末梢に力が入らず腱反射が低下して、顔面に神経麻痺が認められた場合は、GBSだと考えその後の診療を進めても良いと考えています。

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