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急性中耳炎

難治性中耳炎の病態的特徴と免疫グロブリン(IVIG)製剤による治療

監修 : 医療法人慶友会 守谷慶友病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科 つくば難聴めまいセンター センター長 山中 昇 先生

2015年8月掲載
(審J2006183)
第3章 : 難治性・反復性中耳炎に対する免疫グロブリン静注療法(IVIG療法)の実際
◆“IVIG療法の適応症例”と“実際の投与法”、“治療にあたっての留意点”について理解しましょう!◆

難治性・反復性中耳炎におけるIVIG製剤(献血ヴェノグロブリン®IH)投与の意義はご理解いただけたと思います。次に、IVIG製剤投与の実際、留意点について解説します。

1)血清IgG2を測定

肺炎球菌やインフルエンザ菌が起炎菌として同定され、ガイドラインに沿った治療やワクチンによる予防など適切な治療を行っても急性中耳炎を反復する症例では、血清IgG値が正常でも、IgG2値が低値、さらに特異的抗体価が低値である可能性が高いため、血清IgG2値を測定します。
測定の結果、血清IgG2値が80mg/dL未満の場合、免疫グロブリン製剤の投与を考慮します。

*小児急性中耳炎診療ガイドライン2013年版では、6ヵ月間に3回以上、12ヵ月間に4回以上、急性中耳炎に罹患する場合を反復性中耳炎と定義していますが、IVIG療法を考慮する場合は、過去6ヵ月間に4回以上 急性中耳炎に罹患している患児が対象となります。

血清IgG2検査は、平成27年2月1日より保険適応

血清IgG2検査は、平成27年2月1日より保険適応となりました。

●保険点数: 388点
●診療報酬の区分: D014
●保険算定に際しての留意事項:

ア)IgG2は、区分番号「D014」自己抗体検査「29」IgG4の所定点数に準じて算定する。

イ)本検査は、ネフェロメトリー法による。

ウ)本検査は、原発性免疫不全などを疑う場合に算定する。なお、本検査を算定するに当たっては、その理由および医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

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2)難治性・反復性中耳炎に対するIVIG製剤(献血ヴェノグロブリン®IH)の適応

IVIG製剤(献血ヴェノグロブリン®IH)は、

①過去6ヵ月間に急性中耳炎として4回以上の発症を認めること
②起炎菌として肺炎球菌またはインフルエンザ菌が同定されていること
③血清IgG2値80mg/dL未満が継続していること
の3つの条件を満たす場合に適応となります(図5)。

3)IVIG製剤(献血ヴェノグロブリン®IH)の投与方法

人免疫グロブリンGとして、初回は300mg(6mL)/kg体重、2回目以降は200mg(4mL)/kg体重を投与します。投与間隔は通常4週間とし、6回を目安とします(図5)。

図5 : IVIG製剤(献血ヴェノグロブリン®IH)の適応・投与方法

図5 : IVIG製剤(献血ヴェノグロブリン®IH)の適応・投与方法

4)IVIG療法の臨床効果

警告・禁忌を含む使用上の注意等は添付文書をご参照下さい。

①国内第Ⅲ相臨床試験結果[承認時評価資料]

血清IgG2値の低下を伴う反復性中耳炎患児31例を対象として実施した献血ヴェノグロブリン®IHの臨床試験において、急性中耳炎の発症回数を指標とした有効率(著効+有効)は80%:20例/25例、本剤投与開始前の発症頻度は0.886回/月から最終投与4週後0.076回/月と有意に低下し、本剤による高い臨床効果が認められました(図6、7)。

*本剤投与開始~6 回目投与終了4 週後までの急性中耳炎発症回数が、0回を著効、1〜2回を有効、3回以上を無効と判定しました。

図6 : 急性中耳炎の発症回数(有効率)

図6 : 急性中耳炎の発症回数(有効率)

図7 : 急性中耳炎の発症頻度

図7 : 急性中耳炎の発症頻度
②症例紹介

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、すべての症例が同様の結果を示すわけではありません。

IVIG療法を実施した症例をご紹介します。

耳漏を主訴に生後5ヵ月で来科し、中耳炎を頻回に反復した症例において、IVIG療法(1ヵ月ごとに6回実施)により、感染の回数が減少しました(図8)。

図8 : 臨床経過

図8 : 臨床経過

本症例の血清中の肺炎球菌特異的IgG2抗体の推移を検討したところ、IVIG療法開始前には正常カットオフ値以下であった肺炎球菌特異的IgG2抗体は、治療開始後に改善し、治療終了後もカットオフ値以上を維持しました(図9)。

図9 : 血清中肺炎球菌特異的IgG2抗体の推移

図9 : 血清中肺炎球菌特異的IgG2抗体の推移
症例報告者 : 和歌山県立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授 山中 昇 先生

5)IVIG療法実施に際しての留意事項

IVIG製剤は、耳鼻咽喉科医にとって汎用される薬剤ではありませんので、IVIG療法を実施するに当たっての留意事項を以下に示します。

●小児科との連携が望ましい
2歳未満の乳幼児に静脈注射を行うのは難しく、IVIG製剤の副作用発現時の適切な対応のためにも小児科医との連携が望ましいと考えています。

●保護者への説明は必須
▼難治性中耳炎に関する説明

・急性中耳炎を反復する原因が免疫学的未熟であること(免疫不全ではない)や治療方針、治療方法について説明します。
再発を繰り返すことで、保護者が精神的に不安定になるケースがあり、こういった保護者の精神状態が子供に影響する場合があるため、保護者のインフォームドコンセントをきっちりと行うことが重要です。

▼IVIG療法に関する説明
以下の内容について説明します。
・IVIG製剤を6回を目安に補充すると中耳炎の原因菌に対する免疫抗体(IgG)が補充され、反復しなくなる可能性が高いこと
・免疫能は成長と共に上昇するため、IVIG療法は将来的に継続して実施する必要はほとんどないこと
・IVIGの副作用として、臨床試験においては発熱や振戦が認められたが、一過性ですべて回復したこと

*献血ヴェノグロブリン®IHの重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、肝機能障害、黄疸、無菌性髄膜炎、急性腎不全、血小板減少、肺水腫、血栓塞栓症、心不全があらわれることがあります。

最後に

難治性中耳炎は、難治化の原因に対して的確に対処することで治療効果が得られます。この難治性中耳炎の治療法として、IVIG療法が新しく加わりました。難治性中耳炎の病態的特徴と、IVIG療法の投与法を理解していただき、本病態の治療の一助としてください。

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