難治性中耳炎の病態的特徴と免疫グロブリン(IVIG)製剤による治療
監修 : 医療法人慶友会 守谷慶友病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科 つくば難聴めまいセンター センター長 山中 昇 先生
(審J2006183)
監修 : 医療法人慶友会 守谷慶友病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科 つくば難聴めまいセンター センター長 山中 昇 先生
反復性中耳炎では宿主免疫能の未熟が難治化の原因であることを説明しましたが、“免疫能の未熟”とはどのような状態なのでしょうか?
小児では、生後1歳までに15〜50%、生後2歳までに22〜74%、生後3歳まででは50〜71%が少なくとも1回の急性中耳炎に罹患し、さらに、生後3歳までに30〜40%の小児が3回以上も罹患することがわかっており、急性中耳炎は小児で頻繁に繰り返す疾患といえます(図1)。
図1 : 小児における急性中耳炎の罹患頻度
反復性中耳炎患児の免疫能を検討した結果、免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA)値は健常児と差がないことが多いのですが、急性中耳炎の起炎菌に対する特異的免疫応答について検討したところ、反復性中耳炎患児の約54%に肺炎球菌莢膜多糖体IgG2抗体価の低値、約45%にインフルエンザ菌P6蛋白に対する特異的IgG抗体価の低値が認められました(図2)。
つまり反復性中耳炎患児では、全体的な免疫不全は認められなくても、起炎菌に対する特異的免疫応答が未熟なことがあるといえます。
図2 : 反復性中耳炎患児における起炎菌特異的免疫抗体価低値の割合
反復性中耳炎患児で低値が認められた肺炎球菌莢膜多糖体IgG2について解説します。
免疫の中で大きな役割を担っている免疫グロブリンは、IgM、IgD、IgG、IgA、IgEの5つのクラスに分類されますが、全免疫グロブリンの2/3以上を占め、ヒトを感染症から防御する重要な役割を担っているのがIgGです(図3)。IgGには、γ重鎖の構造の違いから4つのサブクラスが存在します(図4)。
サブクラスの1つであるIgG2は、中耳炎の起炎菌である肺炎球菌などの莢膜多糖体抗原に対する抗体を多く含んでいます。
図3 : 免疫グロブリンのクラスとIgGサブクラス
図4 : IgGサブクラスの構造
図2に示したとおり、反復性中耳炎患児の一部では血清IgG2が低値のため、肺炎球菌などの莢膜多糖体を有する細菌に対し易感染性となり、急性中耳炎などを反復罹患することがあります。そのため、急性中耳炎を反復する症例で、血清IgG2低値が確認された場合、IVIG製剤(献血ヴェノグロブリン®IH)の補充を考慮する必要があります。
JBスクエアに会員登録いただくと、会員限定にて以下の情報をご覧になれます。