難治性中耳炎の病態的特徴と免疫グロブリン(IVIG)製剤による治療
監修 : 医療法人慶友会 守谷慶友病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科 つくば難聴めまいセンター センター長 山中 昇 先生
2015年8月掲載
(審J2006183)
(審J2006183)
監修 : 医療法人慶友会 守谷慶友病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科 つくば難聴めまいセンター センター長 山中 昇 先生
難治性中耳炎の定義は、国内外でも標準化されたものはありませんが、病態的特徴から「遷延性中耳炎」「反復性中耳炎」「乳幼児中耳炎」の3つに分類することができます。それぞれ難治化の原因が異なるため、難治化の原因や問題点を十分に理解し、治療方針を決定することが重要です。
急性中耳炎難治化のリスクファクター(危険因子)
急性中耳炎難治化のリスクファクター(危険因子)として
●両側罹患(両側性)
●鼻副鼻腔炎の合併
●低年齢(2歳未満)
●集団保育
が報告されており、これらに該当する場合は、注意が必要です。
難治性中耳炎の病態と難治化の原因について、ご理解いただけたと思います。
それでは、それぞれの病態に適した治療方針について示します。
難治性中耳炎は病態により難治化の原因が異なるため、まずは患者がどの病態に該当するのかを把握します。
起炎菌の特徴把握、薬剤耐性やバイオフィルムを考慮した適切な抗菌薬の投与、鼓膜切開による排膿などを実施します。
免疫能の把握、免疫能の補充(人免疫グロブリン製剤[献血ヴェノグロブリン®IH]や十全大補湯*の投与)、鼓膜換気チューブ留置術などを実施します。
抗菌薬の予防投与は推奨されません。
表1 : 第1章のまとめ
遷延性中耳炎 | 反復性中耳炎 | 乳幼児中耳炎 | |
定義 | 急性中耳炎と同様の異常鼓膜所見が3週間以上持続している。 | 6ヵ月以内に3回以上、12ヵ月以内に4回以上、急性中耳炎に罹患する。 | 2 歳未満の急性中耳炎 |
難治化の原因 | ●薬剤耐性菌 ●バイオフィルム ●細菌の粘膜内侵入 |
宿主免疫能の未熟 | 起炎菌の問題と宿主免疫能の未熟が混合 |
治療方針 | ●起炎菌の特徴の把握 ●バイオフィルム対策 ●鼓膜切開による排膿 |
●抗菌薬の予防投与は推奨されない
●免疫能の把握●鼓膜換気チューブ留置術 ●人免疫グロブリン補充
●十全大補湯*(献血ヴェノグロブリン®IH)** |
遅延性と反復性の治療対策を考慮 |
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