血漿分画製剤の各種ウイルスに対する安全性を確保するためには、「原料血漿採取段階の対策」「製造工程中におけるウイルス不活化・除去」ならびに「最終製品段階における確認試験」が重要なポイントで、その強化が図られています。
その結果、近年の血漿分画製剤の安全性は格段に向上していますが、そのような対策にもかかわらず、未知のウイルス等の混入を完全には否定できません。
そのため、日本血液製剤機構ではウイルスクリアランス試験に加えて新規のウイルス不活化・除去の検討や対策を進め、安全性向上に努めています。
現在までに英国のCJD サーベイランスにより、英国血漿由来血液凝固第Ⅷ因子製剤によるvCJD 伝播の可能性のある症例が英国で1 例15)、輸血によるvCJD 伝播の可能性のある症例が英国で4 例16~19)報告されています。症例は2007 年以降報告されておらず、現在では輸血による感染リスクは理論的リスクとされています39、40)。CJD の原因物質である異常プリオンたん白を検出する試験法の開発研究が継続されていますが、ヒト血液(血漿)中に存在するかもしれない異常プリオンたん白を検出する方法の確立には至っておりません。
そこで、現時点で採り得る対策として、問診により、「CJD患者ならびに、その疑いのある人」及び「CJD 発症のリスクのある人」を供血者から除外しています。また、牛海綿状脳症(BSE)が多発している国への長期渡航経験者を供血者から排除するなどにより、vCJD 対策が継続的に実施されています。さらに全ての血漿分画製剤の添付文書「重要な基本的注意」の項にvCJD 伝播のリスクについて記載し、注意をよびかけています※1。また万一、後にCJD と診断された供血者の血漿が原料に用いられていたことが判明した場合には、製品の回収等、厚生労働省の方針※2 に従った対応を行います。
製造工程において異常プリオンたん白を低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播リスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。
【厚生労働省通知(平成 16 年 3 月 5 日)】
薬食安発第0305002号、薬食監麻発第0305001号、薬食血発第0305004号「血液製剤関係のプリオン病対策について」CJD等プリオン病の危険因子を有する者による供血は極力事前に排除されるべきであるが、供血者がCJD等プリオン病を発症したことが供血後に判明した場合、それが血液を介し感染する可能性がある感染性プリオン病(変異型CJD、硬膜移植によるCJD 等)である場合は、念のため関連する血液製剤を回収すること。
日本における血漿分画製剤の国内自給化への意識は、1980年代前半から急速に高まりました。これは、血液という、ある意味で人体の臓器を原料とした血漿分画製剤の供給を海外に依存することに対する国内外からの批判や反省からです。そして分画用血漿確保のための努力が厚生労働省、日本赤十字社により進められ、2010年代には免疫グロブリン製剤の国内自給率は9 割以上となりました。
しかし、近年は適応追加や患者増などによる免疫グロブリン製剤の需要が増加したため、輸入製剤の比率が高まり国内自給率が減少している状況です。
一方、アルブミン製剤については、1999 年、2005 年、2012 年および2017 年に血液製剤の使用指針の改定が行われ、国内自給化を目指してなお一層の使用の適正化が期待されていますが、依然その約3割を海外製剤に依存しています。
また、2003年7月30日には「採血及び供血あつせん業取締法」を改正した「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)」が、以下の基本理念のもとに施行されています。
同時に当時の薬事法(現 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)も一部改正され、血漿分画製剤を含めた生物由来製品については、医療関係者や血液製剤メーカー等の関係者に対して、今後一層の安全対策の強化が義務付けられています。
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