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血液製剤の安全対策の歴史 -ウイルス対策-
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血液製剤(輸血製剤、血漿分画製剤)は、人体の一部である血液から製造されていることから、 血液を介するウイルス等による感染が問題となってきました。その中でも特に問題と なってきたウイルスは、血清肝炎を引き起こすB型、C型肝炎ウイルスと、HIV(ヒト免疫不全ウイルス) です。

そのため血液製剤のウイルス感染対策の歴史は、当初肝炎ウイルスやHIVから始まり、今日では 全ての感染性病原体に対する安全性確保の追求に至っています。

japan…我が国における血液製剤に関わる安全対策の歴史

ウイルス等感染性物質の歴史
1905 梅毒の病原体スピロヘータ・パリーダ発見
1920-21 クロイツフェルトとヤコブによる最初のCJD(クロイツ フェルトヤコブ病)患者の報告
1948 日本で輸血による梅毒感染を確認
1952 japan日赤献血スクリーニングに梅毒トレポネーマ抗体検査導入
1956 japan「採血及び供血あっせん業取締法」(採供法)施行
1964 ・オーストラリア抗原を発見
・ライシャワー事件(ライシャワー駐日大使が輸血後肝炎に感染)
japan「献血の推進について」閣議決定
1968-69 B型肝炎とオーストラリア抗原の関連性が解明
1970 B型肝炎ウイルスを確認
japan日赤献血スクリーニングに肝機能[ALT(GPT)]検査導入
1972 japan日赤献血スクリーニングにHBs抗原検査導入
1974 非A非B型肝炎を提唱
japan輸血用血液製剤のすべてを献血で確保する体制の確立
1977 ATL(成人T細胞白血病)の報告
1981 ・原因不明の免疫不全症の報告(後にAIDSと命名)
・ATL患者よりHTLV-1を発見
1982 プルシナー、プリオン 説を提唱(翌1983年に異常 プリオンを発見)
1983 モンタニエ、AIDSの原因ウイルスとしてLAV(後にHIV に統一)を発見
1984 ギャロ、AIDSの原因ウイルスとしてHTLV-III(後にHIV に統一)を発見
1986 ・AIDSウイルスの呼称をHIVに統一
・HIV-2の発見
・英国でBSE(牛海綿状脳症)発生
・ヒトヘルペスウイルス6型発見
japan日赤献血スクリーニングにHIV-1抗体、HTLV-1抗体検査導入
japan「血液製剤使用適正化ガイドライン」策定
1987 米国、人脳硬膜使用によるCJD感染の第1例報告
1988 japan「血液製剤によるウイルス感染者の早期救済について」国会決議
1989 ・C型肝炎ウイルスを発見
・薬害エイズ事件(1980 年代 輸入血漿を原料とする非加熱血液凝固因子製剤にHIVが混入していたことにより、血友病患者の4割にあたる約2000人が感染)
japan「輸血療法の適正化に関するガイドライン」策定(1999年改定)
japan日赤献血スクリーニングにHCV抗体、HBc抗体検査導入
1990 E型肝炎ウイルス発見
1993 japan「生物学的製剤基準」改正 採血時の試験にHIV抗体、HCV抗体試験を義務づけ
1994 ・ヒトヘルペスウイルス8型発見
・ヘンドラウイルス発見
japan日赤献血スクリーニングにHIV-2抗体検査導入
japan血液凝固第Ⅷ因子製剤(遺伝子組換え製剤除く)の献血血液による国内自給達成
1995 G型肝炎ウイルスを発見
1996 英国で変異型CJD発生
japan日赤献血検体保管開始
1997 ・輸血後非A〜非G型肝炎患者よりTTウイルスを発見
・トリインフルエンザウイルス(A型)発見
japan輸血にインフォームド・コンセントを制度化
japan血液製剤に関する記録の保管・管理を制度化
japan日赤献血スクリーニングにヒトパルボウイルスB19検査導入
japan日赤献血スクリーニングにHIV、HBV、HCVミニプールNAT導入(分画用原料血漿)
1999 ・ニパウイルス発見
・ウエストナイルウイルス発見
japan「血液製剤の使用指針」策定
japan「血液製剤の安全性確保のためのガイドライン」策定
japan日赤献血スクリーニングにHIV、HBV、HCVミニプールNAT導入(輸血用血液)
2001 ・日本でBSE発生
・ヒトメタニューモウイルス発見
japan「生物学的製剤基準」改正 血液製剤の原料段階におけるHIV、HBV、HCV-NATの義務づけ等
japan分画用原料血漿の貯留保管の実施
2002 ・SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルス感染症の発生
・米国で変異型CJDの最初の感染例を確認
2003 ・米国でBSE発生
・SARSコロナウイルス(SARS-CoV)発見
japan薬事法改正生物由来製品に対する安全対策の義務づけ等(2005年施行)
japan「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(血液法)施行
2004 ・日本で高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の鳥への感染を確認
・E型肝炎ウイルス:国内で輸血後肝炎が確認
2005 日本で変異型CJDの最初の患者(英国滞在歴あり)を確認
japan「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」策定
japan「血液製剤の使用指針」の改定
japan欧州渡航歴(1日以上)の献血制限措置の実施
2009 新型インフルエンザ(H1N1)(パンデミック2009)の世界的大流行
2010 japan欧州等渡航歴による献血制限措置の見直し(1日以上→1ヶ月以上)
2011 japan「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(施行規則)一部改正
2012 ・MERS(中東呼吸器症候群)ウイルス感染症の発生
・SFTSウイルス発見
japan献血血液の検査基準の変更(B型肝炎対策)
2013 japan「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針」改正
2014 ・デング熱感染例の報告(日本国内で約70年ぶり)
・ジカウイルス:ブラジルでアウトブレイク発生
japan日赤献血スクリーニングにHIV、HBV、HCV個別NAT導入
2017 japan「血液製剤の使用指針」の改定
2019 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2): 中国武漢市でアウトブレイク発生
その後、世界的なアウトブレイクに至る
2020 japan日赤献血スクリーニングにHEV NAT導入
2022 ・サル痘(現、エムポックス)の流行
審J2312179
参考文献
  • 1)
    遠山 博:輸血学 改訂第2版、中外医学社、1989年
  • 2)
    血液事業関係資料集、財団法人血液製剤調査機構、1995年〜2014年
  • 3)
    酒井 シヅ:からだの科学、III、1985年
  • 4)
    大里 外誉郎編:医科ウイルス学 改訂第2版、南江堂、2002年
  • 5)
    MMWR, 51, 41, 927, 2002
  • 6)
    日本PDA製薬学会 バイオウイルス委員会:バイオ医薬品ハンドブック 第4版 ~Biologicsの製造から品質管理まで、じほう、2020年

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