風の音~輝く星たち~

私が大切にしていること

私が看護師として一番大切にしていることは、患者さんとのコミュニケーションです。

患者さんを理解するため、患者さんとの関係性を築くためには、やはり実際にお話を聴かせていただくことがとても大事だと血友病患者さんとの関わりの中で日々実感しています。


当院での取り組み(相談シート作成に至るまで)

私が血液内科外来を担当するようになって約8年が経ちます。今では血友病患者さんと関わる時間が楽しくて仕方がないのですが、実は数年前までほとんど関わることができていませんでした。

成人の血友病患者さんは病気のことを熟知している方が多いため、知識の少ない私が関わっても役に立てないのではと感じ一歩引いていたからです。

しかし、継続看護(入院から外来、地域へと継続した看護の提供)の重要性や外来看護が注目されるようになり、私の苦手意識を理由に関わることができていないのはいけないなと思うようになりました。

そして、どのように関わっていけばよいのか考える中で、「相談シート」作成に至りました。

このシートは当院オリジナルの情報収集シートで、半年に1回のペースで患者さんに記入していただき、近況(出血状況や製剤の補充状況、関節状態など)や日々の困りごとなどを教えていただいています。

診察の待ち時間に看護師からシートを渡し、診察前に一緒に内容を見直し、診察時に医師とも確認するようにしています。

診察後さらに面談して話を聴かせていただくこともあります。


活用して見えたもの

相談シートを活用して、リハビリ希望(自分で筋トレも含む)や注射・血管に関する悩みをお持ちの患者さんが意外と多いことが分かりました。

リハビリについては、「自分でしたいがやり方がわからない」「ずっと指導を受けたいと思っていたが希望を聞かれたことがなかった」という方が多いです。

希望や状況に応じてパンフレットでの指導や理学療法士による指導、近隣の医療機関での通院リハビリを調整するなどできる限りの対応をしています。

その結果、日常にトレーニングを取り入れたり関節や筋肉を意識するようになったと生活の変化につながっている方もいます。

注射・血管に関しては、加齢に伴う視力低下や指先の感覚変化などにより、これまで難なくできていた穿刺が困難になってきたという方が多いです。

また、「血管が硬くなった」「逃げる」「穿刺できる血管を増やしたい」と話す方も。相談シート聴取時には穿刺血管を一緒に確認し、必要に応じて手技の再確認を行っています。

実際に確認すると清潔操作が不十分であったり、穿刺の角度や固定などが自己流であったりとひやひやすることがありますが、再指導を行ったことで、穿刺の失敗が減った方もいらっしゃいます。


最後に

患者さんとの関わりが増え、患者さんにとって私は迷惑な存在になっているかもしれません(特に体重増加が見られる患者さんには体重管理や食事指導を行うことがありますから)。

しかし、「実は…」と医師に言うほどではないが“ちょっと気がかりなこと”などを話してくださる場合もあります。

この「実は…」には、患者さんの率直な思いが詰まっていると感じており、貴重な言葉だと思っています。

そこから新たな関わりにつながることもあります。患者さんの思いを拾い上げられるようこれからもコミュニケーションを大切に関わっていきたいと思っています。

どんな話でもかまいません。

私たち医療者にとって患者さんが話してくださることは関わる際の参考になりますし、お役に立てることもあると思っています。ぜひあなた自身の話を聴かせてください。

(2024年Vol.76春号)
審J2404018

池上 明香 兵庫医科大学病院
血液内科外来
看護師